五銖銭 大星文

 五銖銭の「星文」のなかには、控え目な小さな星から、しっかりした星、そして、大きな星がある。鋳銭工員の戯技である「星文」は正規の印ではなく、あくまでも鋳銭工程で、不良部分、欠陥部分として許容される範囲内で秘密裏におこなわれていたが、段々印付け行為も大胆になっていった。

f:id:gorogure:20210505085357j:plain

 四角い穴の下に不整形な星がある。この「星文」は印付けが不完全で、凸状の部分と凹状の部分が星のなかにある。鋳造粘土鋳型に棒状の道具で印付けをしたと思われるが、印付け行為が秘密の裡に、すばやく行われていたであろうことが窺われる。

f:id:gorogure:20210507111536j:plain

 次の銭貨は、「穿上大星文」である。これだけ大胆に、しっかりと大きな星を刻み付ける鋳銭工員の気概やいかに、である。この星文は、銭貨の「五銖」の文字や銭貨の縁(輪)よりも深く鋳造粘土鋳型に刻み付けられたようで、星全体が磨滅して光って主張している。